■あらすじ■

世界一の美食家グルメール男爵の古城で、仮想ディナーパーティ
が催されていた。コック団長が次々と世界の珍味を紹介する。
しかしグルメール男爵が食べたいのはルパンの脳ミソ。
いつまで経っても手に入らないことに業を煮やしたグルメール
男爵は、ルパンを捕まえてきた者には宝石コレクションをやろう、
とまで言い出した。
それを聞いて微笑んだのは・・・不二子。

ルパンのアジトでは、ベーコン豆を料理する次元、砂時計に全神
経を集中させてカップそばの蓋を斬る五右ヱ門のもとに、ルパン
が一張羅に着替えて登場。
これから不二子と一流レストランでディナーだと喜ぶルパンを、
次元たちは「不二子に食われちまわねぇように気をつけな」と
冷ややかな目で送り出す。

さて、いよいよ不二子とロマンチックにレストランでデート。
・・・と、突然頭上から巨大なフォークが降り注ぐ！
・・・案の定、不二子に裏切られてしまうルパン。
あっという間に不二子とコック団長に捕まると、哀れ、カチコチ
に冷凍されてグルメール男爵のもとへ運ばれていくのだった。

古城に連れてこられたルパンは、まずは美味しいお肉になるため
の下ごしらえをされる。
目覚めはたっぷりのビールにたっぷりのビール風呂。肉が柔らかく
なったところで刺激を与えるためにトンカチで頭を叩く。
そうかと思えば美女がキスの嵐。
ハードに、そしてソフトに、はたまたハードに・・・。
さらに首から下を箱詰めし、栄養たっぷりの食事を無理やり口に
押し込められる。
食後にはベルトコンベアと銭形を使って適度な運動。
最後にサウナで体をキレイにすると、美味しく丸まると太ったお肉
のできあがり。
そこを瞬間冷凍すればハイ、下ごしらえ完了。
一方、不二子は約束どおりルパンを捕まえた報酬にグルメール伯爵
に宝石コレクションをもらおうとするのだが、伯爵は知らん顔。
これに怒った不二子、ルパンを連れて逃げ出そうとするのだが、
ぶくぶくの巨体に太ってしまったルパンは逃げ出すことはおろか、
動くことさえままならない。
仕方なく一人で脱出し、次元と五右ヱ門を呼びに行く。

いよいよルパンの脳ミソが食べられる日がやってきた。
この日のために用意されたのは、くるみ割り人形ならぬ「頭割り
人形」。
そして、頭割り人形にセットされたルパンの頭が砕かれた！
舌なめずりをしながらグルメール男爵が脳ミソをスプーンで
一すくい。
待ちに待ったルパンの脳ミソのお味は・・・
なんと普通の味噌の味！？
それもそのはず、それはただの味噌。ブクブクのルパンの体は
実はぬいぐるみで、本物はその中に隠れていたのだ。
宝石は男爵の口の中の総入れ歯だと知ったルパンは仕返しに
大暴れ。
不二子、次元、五右ヱ門もコック軍団にトリモチ入りの特製
パイを投げつけて応戦。
かくしてトリモチまみれになった男爵とコック軍団は身動きが
取れなくなってしまうのだった。

さて、ここからコック軍団からバトンタッチで「ルパンのお料理
天国」。
本日のお料理はグルメール男爵のつるし上げ。材料はグルメール
男爵。悪趣味でハラワタまで腐った悪党は煮ても焼いても食えま
せん、と司会のルパン。
そこで不二子がグローブをつけて男爵の顔面にパンチをお見舞い
すると、グローブに宝石の総入れ歯がくっついてきた。
大喜びする不二子。
というわけで、本日のお料理天国はこれでオシマイ。




■見どころ■

“ルパンの脳みそを食べる”だなんてブラックで一歩引きたくなる
ところなのだけど、ノリは完全なコメディ。
激しくデフォルメ化されたグルメール男爵の容姿や、いかにも胡散
臭そうな司会（コック）の声がブラック色を押さえ込んでいる。
極めつけにラストのパイ投げシーンのＢＧＭは「ルパン音頭」。
３分間クッキングよろしく展開される小気味いいテンポについつい
乗せられてしまう大好きな作品。

ポイント１：コック軍団の３分間クッキング
　　「おいしいルパン！その一　材料調達」
　　「その二　材料吟味」
　　「その三　下ごしらえ」
　　・・・と、まさに３分間クッキングのノリ。下ごしらえの段階
　　は何度観ても面白い。
　　さらに詳しいことはテキストにまとめてあるらしいのだが
　　（希望の人は番組の最後にお知らせありというセリフあり）、
　　そのテキストのタイトルは「グルメールのスーパークッキン
　　グ」８月号愛蔵版。
　　“ルパン料理のＡ〜Ｚ活作りその１”および“紙おむつの
　　おいしい食べ方”という特集を組んでいるらしい。
　　最後はルパンが「お料理天国」を実況してくれる。

ポイント２：ベーコン豆と次元。
　　パチパチ弾けるベーコン豆と早撃ちごっこで遊ぶ次元はかなり
　　意外で愛しい！真剣にカップそばの蓋を斬る五右ヱ門もまた
　　要チェックどころ。
　　さらにベーコン豆を頬張る次元の口の動きが最高にツボ！
　　（↓ここ）
　　（細かいが、そばをすする五右ヱ門の尖った口元もイイ。）
　　

ポイント３：コック姿も似合う３人
　　ルパン、次元、五右ヱ門のコック姿も要チェック。
　　特に「なぜ拙者がこのようなことを」と不貞腐れる五右ヱ門の
　　顔が絶妙！
　　ところで今回一番損をしたのはとっつぁん。ルパンを追って
　　きただけなのに、グルメール男爵の試食用にされてしまい、
　　ジョリジョリと頭の髪をそられてしまう。
　　そして間一髪のところを逃げたはいいが、今度はオラウータン
　　のマリリンに好かれて追われる羽目に。不憫な・・・

ポイント４：セリフ
　　グルメールが用意した「頭割り人形」もまた、脳みそを取り
　　出す機械ということで一見グロテスクなのだが、ルパンが
　　ぼそっと「チャイコフスキー？」と呟く。
　　こんな時にも洒落を利かせるセリフが心憎い。
　　次々とショックな（だけどどこかユーモラスな）シーンが
　　登場するのだが、それにしてもやはりブクブクに太ったルパ
　　ンはちょっとショック（苦笑）
　　しかしここも山田さんの声に注目。太ったルパンの声をきち
　　んと演じ分けている。





■データ■

<放送日>
　1979年8月13日放送
<スタッフ>
　脚本／金子裕
　絵コンテ／青木悠三
　演出／御厨恭輔
　作画監督／北原健雄、児玉健嗣
<キャスト>
　雨森雅司、緒方賢一



■プチ用語■

「お前らも、もう少し栄養とらんと、らちかんぞ」
　ルパンのセリフは当時の『カゴメ野菜ジュース』のＣＭから。